映画「エクソシスト」と言えば、世界中の多く人が知っているオカルト映画です。
正にホラー映画の金字塔と言うに相応しいこの映画は、ウィリアム・ピーター・ブラッティ氏の原作によって生まれました。
ブラッティ氏が映画界に与えた影響は大きく、20世紀の偉人と言って問題ないでしょう。
今回は”エクソシスト”原作者ウィリアム・P・ブラッティが逝去!その資産額は?映画界への遺産とは?などに注目します。
”エクソシスト”原作者ウィリアム・P・ブラッティが逝去!

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*ウィリアム・ピーター・ブラッティ
ウィリアム・ピーター・ブラッティ氏は全世界で1300万部も売れた大ベストセラー「エクソシスト」の原作者です。
そのブラッティ氏が現地時間の12日にアメリカ合衆国メリーランド州ベセスダで多発性骨髄腫の為に亡くなりました。
年齢は89歳でした。
ブラッティ氏の死亡は、妻のジュリーさんが発表し、The Hollywood Reporterなどが報じました。

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*日本語翻訳エクソシスト初版

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*ウィリアム・ピーター・ブラッティ
ブラッティ氏は、多くの人がホラー作家と思っているでしょうが、「エクソシスト」以前は、コメディ映画の脚本や戦争モノやアクションの脚本などを手掛けていました。
敬虔なカトリック教徒の家庭で育ったブラッティ氏は、ジョージタウン大学在籍時にメリーランド州に住む少年の悪魔憑き事件を知ります。
その際に、神の存在を証明する為のノンフィクションを構想しますが、やがてその事を忘れてしまいました。

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*左からウィリアム・ピーター・ブラッティ、リンダ・ブレア、ウィリアム・フリードキン
脚本家としてある程度の成功を収めたブラッティ氏でしたが、それらは決して自分が描きたい事ではないと葛藤の中で生きることになります。
本格的な小説を書きたいと考えていたブラッティ氏は、大学生時代に耳にしていたメリーランド州の悪魔憑き事件を思い出します。
それは正に偶然の産物と言えるものだったのです。
悪魔祓いの小説を書こうと決めたブラッティ氏は、メリーランド州の事件、そして多くの神父や司祭に対し取材を行いました。

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*ウィリアム・ピーター・ブラッティ
取材の中で、悪魔の存在と悪魔祓いの真実に確信を得たブラッティ氏は、小説「エクソシスト」を完成させます。
この類稀な小説は瞬く間に世界的ベストセラーとなりました。
この大ヒットによって、当時のアメリカワーナー・ブラザーズから映画化のオファーがきます。
ブラッティ氏は、映画をコントロールすることを条件にこのオファーを請けます。

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*エクソシスト悪魔祓い場面
映画をコントロールする為に出した条件は、自身が脚本を書くこと、監督は自分が決めること、自身が出資をし制作者になることでした。
これらは受け入れられ、ブラッティ氏はクランクインの前年に映画「フレンチ・コネクション」でアカデミー作品賞、監督賞を受賞したウィリアム・フリードキン監督にオファーを出します。
しかし、フリードキン監督によって、ブラッティ氏は映画をコントロール出来なくなります。
2人の確執が解けるには、結局「エクソシスト」の公開30周年記念まで待つことになります。

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*フレンチ・コネクション1場面、手前主役のジーン・ハックマン

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*エクソシストクラクイン後のウィリアム・フリードキン
「エクソシスト」の最初の公開完成品は、ブラッティ氏とフリードキン監督の考えは2:8の割合で、ブラッティ氏の意見は20%しか反映されなかったのです。
ブラッティ氏が最初に書いた脚本は、フリードキン監督の手によって捨てられました。
フリードキン監督は、原作本にラインを引き、それをブラッティ氏に見せて「映画にするのはこの線の部分だけで充分」と脚本を書き直させました。

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*エクソシスト1場面 メリン神父がリーガン宅に到着した場面
それでも映画は全世界で大ヒットします。
ウィリアム・ピーター・ブラッティの資産額は?

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*エクソシスト1場面
様々な苦労の末に「エクソシスト」を完成させたブラッティ氏ですが、一体どれほどの資産を持っているのでしょうか。
「エクソシスト」以前は、脚本家として映画8本を手掛けました。
しかし、これらの映画はさほどヒットしなかったので、それほどの収入は得られなかったようです。
小説の「エクソシスト」は全世界で1300万部と言う凄まじい部数を記録しました。

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*エクソシスト1場面 悪魔がメリン神父に勝利した直後
この部数がどのくらい凄いのかと言うと、洋楽シングル歴代売り上げ枚数トップ10の2位につけたホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」の1500万枚と近い数値です。
同曲は映画のテーマ曲で、全世界でも極めて有名な曲ですのでご存知の方も多いと思います。
もちろん、「エクソシスト」以上の売上部数を記録している小説もありますが、「エクソシスト」は非常に特殊で特化されたジャンルにも関わらず、これだけの売上部数を誇っているのです。

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*ホイットニー・ヒューストン
作家に入ってくる印税のパーセンテージは、基本的に日本とは変わらない為にブラッティ氏には約10%の印税が入ってきています。
売上部数のほとんどはハードカバーで売れていますので、単価は2000円ほどです。
となると印税としてブラッティ氏には約26億円が入ってきた計算になります。
この後、映画化になるのですが、原作、脚本、制作者としてブラッティは名前を連ねています。

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*エクソシスト1場面 メリン神父1人で戦いを挑む場面
まずは原作の扱いですが、これは映画化の権利を売るか、映画化に際して興行収入に対するパーセンテージをもらう形にするかで大きく収入が変わります。
権利を売れば、ヒットしなくてもお金は決まった額を手に入れることが出来ます。
しかし、万が一大ヒットした場合には、大損をすると言う事になります。
これは現実的にブラッティ氏がどちらを選択したのかは判明しません。
しかし、ワーナーがパート2を制作した際に、ブラッティ氏を蚊帳の外にして制作した経緯をみると、2本の映画を作る権利を売ったのではないかと考えられます。

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*ドキュメンタリー「バトル・オブ・エクソシスト」の1場面
後にブラッティ氏とフリードキン監督は、ヒットはするとは思ったが公開当日に見た長蛇の列を見た時、他のスタッフも含め非常に驚いたと語っています。
つまり、当時の時代の背景を考えると、大作かもしくはアメリカンニューシネマ系の映画以外で、しかもホラー映画がこれほどのヒットをするとは考えられないことだったのです。
その言葉を聞いても、ブラッティ氏が映画化にあたり権利を売ったのだと判ります。
結果として、映画は歴代ベスト10に入る4億8千万ドルの興行収入を記録しました。
当時の為替レートで言うと、日本円では1497億円の興行成績だったのです。

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*エクソシスト冒頭メリン神父が過去に戦ったパズズと再び対峙する予感の場面
ただ、ブラッティ氏の場合、原作での権利料だけではなく、製作総指揮は別に1人いるものの、制作者はブラッティ氏1人です。
また、脚本も手掛けています。
原作の権利料は恐らく4~5億円、脚本に関しては1億円ほどを手に入れているでしょう。
その金額分プラスαを制作者として出資していると考えられています。
映画の興行収入の取り分は映画配給会社と映画館が収入の半分近くを持っていきます。

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*エクソシスト初期公開版で削除されたスパイダーウォークの場面
残りの金額で宣伝や必要経費を差し引き、その金額を出資者で均等に分けると言うのが伝統的なスタイルです。
もちろん、ただの山分けではなく出資金分を返済した上での金額となります。
映画のヒットで、ブラッティ氏はざっと25億円ほど手に入れた計算ですね。
つまり、ブラッティ氏は「エクソシスト」の公開年1974年の翌年1975年までに関連する全ての仕事で50億円強の資産を作ったことになるのです。

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*エクソシスト1場面
その後も、25周年には「25周年記念版」を全世界で再度映画館で公開します。
更に25周年記念では異なるバージョンをいくつか製作し、DVD販売をしています。
30周年には、ブラッティ氏とフリードキン監督が和解し、お互いが100%満足のいくバージョンを作ろうと、カットしたフィルムや音源を様々なところから探し出し、正に「完全版」と呼べるものを製作、DVD発売しました。
この他に、ブラッティ氏は「エクソシスト」の正式な続編「レギオン」を書き上げ、「エクソシスト3」として監督、原作、脚本、製作総指揮と100%映画をコントロール出来る状況下で作り上げました。
また、「エクソシスト ビギニング」も原作を書いており、こちらも映画化されましたが映画製作にブラッティ氏は関わりませんでした。

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*エクソシスト3

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*エクソシスト3 双子座殺人鬼の魂が入り込んでいるカラス神父

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*エクソシスト3 クライマックス

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*エクソシストビギニング 左若い頃のメリン神父

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*エクソシストビギニング 発掘された邪教のアンチキリスト神殿と悪魔
ブラッティ氏は、その後も小説を書きますが、ホラーやオカルト関係は全て「エクソシスト」関連のみで、それ以外はサスペンス&ミステリー系に精神世界が加わった程度のものでした。
もちろん、それらの本も売れはしましたが、「エクソシスト」以上のものは出てきませんでした。
それでも、「エクソシスト」以降は名前が売れていますので、それなりに稼いではいたようです。
こうしたものも全て含めると、ブラッティ氏の総資産額は楽に100億円を超えていると言えます。
奥さんがまだ存命中なので、基本的に遺産を相続するのは奥さんになりそうです。
ウィリアム・ピーター・ブラッティ、映画界への遺産とは?

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*若い頃のブラッティ氏
ブラッティ氏は、映画界に大きな遺産を残しました。
それは、物質的なものではありません。
「エクソシスト」以前と、以降ではオカルトやホラーの捉え方や、製作方法が大きく変わったのです。
更に、ホラーやオカルトでも理路整然と、破綻無く話しを作ることが出来るのだと言うことを教えてくれたのです。

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*エクソシスト リーガンの母親
また、原作者であっても映画の現場で自分の主張をして良いと言う風潮を作りました。
また、「エクソシスト」は凶悪な映画に見えますが、その根底には常に神の存在があります。
原作では、悪魔憑きや悪魔祓いが主体になっている訳ではありません。
この物語はデミアン・カラス神父が主人公で、彼が様々な問題を抱えることで信仰心を失い、悩み苦しみ信仰心よりも、真の人間性を取り戻す物語です。

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*エクソシスト カラス神父が最初の悪魔祓いに臨む

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*エクソシスト カラス神父とメリン神父の階段会話場面
真の人間性を取り戻すことこそが、真の信仰心を取り戻すことと同義だとブラッティ氏は語り掛けていたのです。
初期のバージョンではフリードキン監督にカットされましたが、カラス神父とメリン神父が悪魔祓いの疲弊から短い休憩をとり、落胆して階段に座り2人で語る場面があります。
カラス神父は「何故、あんないたいけな少女があんな目に遭うんですか」と尋ねるとメリン神父は「悪魔は彼女を攻撃しているのではない。我々を苦しめ絶望させたいのだ」と答えます。
ここでもカラス神父は「何故神は助けて下さらないのだ」と言葉にはしなくても疑念を抱いたままでいるのです。

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*エクソシスト リーガンの意味不明な言語のテープを聴くカラス神父
真の人間性とは利己的でありながらも、利他的行為もすることにあります。
これは、地球が誕生してから人間と言う種しか持ち得なかった性質です。
カラス神父は、メリン神父が悪魔に敗れたことで、感情が爆発します。
それは悪魔に対してだけではなく、自分自身に対する怒りだったのです。
そして、カラス神父は真の人間性に目覚め、真の信仰を取り戻し、悪魔を自分の身体に抱きながら身を投げるのです。
原作では、こうした描写が4/5を占めています。
映画は残り1/5のセンセーショナルな部分だけを抜き取ったものです。
しかし、根底にはブラッティ氏が信じる強い信仰心と、良心が根付いている為に凶悪でありながら凶悪だけでは終わらない映画になったのです。

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*先ごろ亡くなった悪魔祓いの権威アモス神父
ブラッティ氏は、神の存在の証明の為に悪魔の存在を証明すると言う逆説的な方法で物語を紡ぎました。
その為には、小説を書く際にも映画を作る際にも、本物の神父の協力が必要だったのです。
当時は現在と違い、バチカンは公式に悪魔憑きや悪魔祓いのことを認めていませんでした。
悪魔祓いは現在も変わりませんが、キリスト教の中では第2の秘蹟の部類になっており、第1の秘蹟ではないほど軽んじられているのです。
そんな中で、ブラッティ氏は映画にアドバイザーとして神父を呼んだばかりか、2人の演技未経験の神父を出演させています。
「エクソシスト」以降、多くの亜流が生まれましたが、唯一バチカンや神父達が認めているのは未だに「エクソシスト」だけなのです。
こうした功績は、今でもハリウッドの発展に寄与していると言え、非常に大きな遺産を映画界に残したと言えるのです。
まとめ
今回は”エクソシスト”原作者ウィリアム・P・ブラッティが逝去!その資産額は?映画界への遺産とは?などに注目しました。
20世紀の偉人の1人と呼ぶに相応しい人物がまた1人亡くなりました。
映画界に大きな貢献と変革をもたらし、大金を得るも自身は質素に生活していたようです。
ブラッティが、この世に残したものはあまりに大きなものと言えます。
ブラッティ氏のご冥福をお祈り致します。