アコムで10年以上前に取引をしていた方の中で、現在はすべて返済しているという方は、その取引で「過払い金」が発生している可能性があります。
過払い金は、発生している事実が分かっても、取引を行っていた消費者金融に対して返還請求をしないと、返還されることはありません。
そこで、この記事では大手消費者金融「アコム」の過払い金について、満額回収は可能なのか、回収までにかかる期間はどのくらいなのかを検証するとともに、過払い金請求の流れについても詳しくご紹介していきます。
記事の目次
アコムで過払い金発生の可能性があるのはいつ頃?
アコムの過払い金は、過去に取引をしたことのある方全員に該当するわけではなく、ある時期に取引をしていた方に限定されます。
その時期というのが、「2007年6月17日以前」です。
2006年頃までは、アコムを始めとする貸金業界の金利は、現在の利息制限法(金利を制限することで高利貸しを取り締まる法律)の上限金利(15.0%~20.0%)を上回る利率(最高利率29.2%)で貸付を行っていました。
アコムについては、2007年6月17日まで「上限27.375%」で貸付を行っていました。
なぜこのような高金利で貸付ができたのかというと、その当時は利息制限法の上限金利(当時も15.0%~20.0%で現在と一緒)の他に、出資法(貸金業者の規制を目的にした法律)の上限金利(29.2%)があり、利息制限法の上限金利を超えても、出資法の旧上限金利を超えなければ法律違反となることはありませんでした。
そのため、アコムを始めとするほとんどの貸金業者は、出資法の旧上限金利を目安に利率を設定したのです。
この金利は、法律違反(ブラック)ではないが違反ギリギリ(限りなくブラック)の金利幅であったことから、「グレーゾーン金利」と呼ばれました。
このグレーゾーン金利は、2010年6月17日の改正貸金業法等の完全施行されたことにより、出資法の上限金利も利息制限法の上限金利の20.0%まで引き下げられ、グレーゾーン金利は消滅しました。
アコムを始めとする貸金業界では、この法律改正を見越して2007年始め頃から徐々に利息制限法の上限金利内に引き下げ始め、アコムも「2007年6月18日」より金利を引き下げました。
アコムは、他の大手消費者金融(プロミス・レイク・アイフル)と比較すると、最も早い段階で引き下げを行っていました。
ちなみに、他社の引き下げ時期はアイフルが2007年8月1日、レイクが同年12月2日、プロミスが同年12月19日です。
このような理由から、アコムで過払い金の発生確率があるのは、アコムの金利引き下げ実施日より前の、「2007年6月17日以前」となります。
アコムの過払い金回収率について
アコムに過払い金請求をする場合、司法書士や弁護士などの法律のプロに依頼し、アコムと交渉をしてもらうのが一般的です。
アコムに過払い金を請求する際には、「和解交渉(話し合いによる交渉)」と「民事訴訟(裁判)」の2つの方法があり、どちらを選択するかによって過払い金の回収率が異なります。
*和解交渉での過払い金回収率→過払い総額の約80%
*民事訴訟での過払い金回収率→過払い総額の100%+α
回収率は、依頼する法律事務所の実力によっても変わってきますが、実績のある法律家に依頼すれば、上記の確率で過払い金を回収することが可能です。
民事訴訟の回収率が「100%+α」となっているのは、「過払い利息」を意味しています。
この過払い利息とは、過払い金にかかる遅延損害金のことで、借入金の返済を延滞すると発生時点から罰則として遅延損害金がかかるのと同じように、過払い金にも発生時点から回収日までに「年率5.0%」の利息が付くことになっています。
アコムに対して過払い金請求裁判を起こせば、過払い金全額と過払い利息分も回収できる確率が高いです。
アコムが過去に返還した過払い金総額について
これまで、アコムが債務者に返還してきた過払い金総額について、過去2年間の返還金額と、損失引当金をまとめてみました。
※損失引当金とは、今後の過払い金返還に対応するため、アコムが事前に損失額を予想して確保するお金を指します。
◎2016年の過払い金返還総額&損失引当金
*過払い金返還総額:688億8,280万円
*損失引当金残高:900億円
◎2017年の過払い金返還総額&損失引当金
*過払い金返還総額:608億8,310万円
*損失引当金(首期):1,640億9,000万円
*損失引当金(期末):1,040億680万円
※アコムでは、2016年には688億円、2017年には608億円もの過払い金を債務者に返還しています。
ちなみに、他社における2017年の過払い金返還総額は、SMBCモビットが482億円、アイフルが244億円となっています。
この2社と比較しても、アコムがいかに多くの債務者の過払い金請求に応じているかが分かります。
アコムの過払い金回収にかかる期間はどのくらい?
過払い金回収にかかる期間は、回収率と同様に、和解交渉・民事訴訟によって異なるほか、依頼する法律事務所の実力によっても変わってきます。
法律事務所に過払い金請求を依頼する際、どの点を重視するかによって回収方法を選択します。
和解交渉(アコム側との話し合い)は、裁判を起こさずに話し合いによって交渉を進めていくため、短期間で解決させることが可能です。
そのため、スピード重視で過払い金回収を望む方におすすめです。
アコムと任意交渉では、「平均2か月~4か月」で過払い金回収が可能です。
裁判は、時間はかかりますが、様々な証拠を用意してアコムに問い詰めることができるため、過払い金のうち100%に近い金額~100%以上を回収することも可能です。
そのため、アコムに払い過ぎた利息を全額返してもらいたいという方におすすめです。
裁判では、「平均4か月~7か月」で過払い金回収が望めます。
アコムの過払い金請求から回収までの流れ
では、アコムの過払い金返還請求を行った場合、回収に至るまでにどのようなステップを踏んでいくのかについて、流れを追って見ていきましょう。
ステップ①:アコムの過払い金請求について相談する
法律の専門家(司法書士・弁護士)に、アコムの過払い金請求の相談をします。
返還請求を申し立てる場合には、自分にアコムで過払い金が発生しているかを明確にしておく必要があります。
更に、過払い金が発生している場合には、その金額はどのくらいなのかについても明確にする必要があります。
法律事務所に相談すると、その日にアコムへ受任通知(過払い金請求の依頼を受けた旨を知らせる通知)と、調査通知(詳しい過払い金情報を調べたい旨の通知)を送付します。
このうち、受任通知は必ずアコムに送付しますが、調査通知についてはアコムに調査依頼を希望する方のみとなっています。
依頼人が行うのは、法律事務所に相談することのみで、アコムとの交渉については、全て司法書士または弁護士が行ってくれます。
ステップ②:取引履歴の開示・過払い金の引き直し計算
調査通知が送られてきたアコムでは、依頼人との「取引履歴(取引内容が細かく記載された書類)」を準備し、約3週間~4週間で送付してくれます。
その取引履歴の内容をもとに、現行の利息制限法に基づく利息で計算し直し過払い金が発生しているか、また過払い金が発生していた場合にはその金額も明らかにしていきます。
これを、過払い金の引き直し計算といいます。
ステップ③:アコムと過払い金返還交渉
依頼人の希望する回収方法で、アコムと過払い金返還交渉を行っていきます。
短期間での過払い金回収では和解交渉、過払い金の全額回収では裁判となります。
和解交渉:
電話でアコムの過払い金担当者と交渉を行います。
ここでは、返還請求金額と返還期日などについて話し合いが行われます。
スムーズな和解が進めば、アコムに書類を送付してから数週間で過払い金が回収できることもあります。
しかし、アコムの提示内容に納得がいかない場合には、裁判によって争うことになります。
裁判:
司法書士・弁護士が依頼人の代理人となって、アコムとの裁判に臨みます。
従って、依頼人は裁判に出廷する必要はありません。
裁判が長引くことはアコムも望んでいないため、依頼人の取引履歴に特別な争点(取引中に分断があった、返還請求の期間を過ぎているなど)がない限りは、3か月前後で依頼人の希望に近い条件で解決できることが多いです。
ステップ④:過払い金返還
法律事務所に相談すると、アコムから回収された過払い金は、一度全額が法律事務所に入金されます。
そこから、交渉にかかった報酬を差し引いた金額が依頼人のもとに返還されます。
その際、この交渉に関する書類を一式受け取り、アコムの過払い金返還請求は終了となります。
アコムの過払い金返還請求をする際の注意点
過払い金の返還請求には手続きができる期間が決まっており、いつでもできるわけではありません。
これは、アコムに限らずどの消費者金融への請求でも同じです。
過払い金の返還請求期間は、「アコムの借入金を完済してから10年以内」です。
完済から10年を過ぎてしまうと時効となり、たとえ過払い金が発生していてもアコムに返還請求をすることはできません。
最近、テレビで過払い金請求のCMを見ることがあるかと思いますが、それは、2008年~2009年前後にローンを完済した方が、今年2018年に過払い金返還請求期間の時効を迎える可能性が高いからです。
もし、自分が今から10年程前に消費者金融からの借金を完済していた場合には、過払い金が発生している可能性があり更に時効が迫っている状況なので、一度専門家に相談することをおすすめします。